クリップオンストロボと大型ストロボの違い

世間では、大型ストロボは「プロ仕様」とされる風潮があり、一方クリップオンストロボは「非常用」みたいな扱いをされているような気がします。ちなみに大型ストロボの一種で「モノブロックストロボ」というのがあります;

↑こういう奴ですね。今、いろんなメーカーが発売していて、正直メーカーの数が多すぎて分かりません(写真はProfotoD1シリーズ)。これは電源部分も内蔵されており、ジェネレーターに接続するものよりコンパクトで比較的低価格なモデルもあるので主流になりつつあります。

それでこうした大型ストロボとクリップオンストロボの違いについてよく聞かれますので私の知る範囲で恐縮ですが簡単に説明します。

まずは結論から;

「どっちも光らせるだけなので『できること』は同じ!」

ということ。大型ストロボだから上手く撮れるとか、クリップオンストロボだからイマイチとかいうのは何の理由にもなりません。上手く撮れないのはセンスや技量の問題であって機械の問題ではありません。

ただ、それぞれ一長一短あるのは事実。

【携帯性】

・大型ストロボ:×

・クリップオンストロボ:○

これは一目瞭然です。大型ストロボを2本持ち歩くとなると大変。一人では無理。一方、クリップオンストロボならカメラバッグに2~3本入れて持ち歩けます。それに今時のスタジオはどこも機材が置いてあり、むしろ「機材持ち込み不可」の方が多いと思います。なので保管スペースがあったり、アシスタントを数名雇っているのでないなら必要に応じてレンタルでも良いように思います。とかく機材の管理というのは面倒なものです。

【光量】

・大型ストロボ:◎

・クリップオンストロボ:○

便宜上大型ストロボを「◎」としてますが、これは使う機種によってバラバラで、クリップオンストロボよりも光量の小さい大型ストロボ(特にモノブロック)もあります。それでクリップオンストロボはどうかというと実は全く問題ない。今では光量の十分な製品も売ってます。ちなみに私が愛用しているYN-560はガイドナンバー58です。

詳しく調べていませんが、某メーカーの製品のカタログを見る限り、「ガイドナンバー58」で恐らく400W/Sクラスのモノブロックストロボと同じかそれ以上の光量だと思います。大型ストロボじゃないと十分な光量が得られない、ということはないです。

それにクリップオンストロボでも光量が足りなければ2本並べて使うこともできますし、それでも足りなければ3本でも4本でも繋げられますしそういう機材も売られています。

光量に関して大きな差となる部分は無いと思います。

【リサイクルタイム】

・大型ストロボ:○

・クリップオンストロボ:△

「リサイクルタイム」というのは発光させたあとにチャージされるまでの時間です。これはさすがに大型ストロボの方が早いです。特に大きな光量の時に有利で、クリップオンストロボの場合は電池が消耗するとリサイクルタイムが長くなります。そういう場合は1/4とか1/2で使ったり、電池を交換すれば良いのですが実際に撮っている最中というのは電池交換が面倒だったり、リズムが狂うので嫌がる人(私ですが)もいます。

また、今のストロボにはオーバーヒート対策機構が搭載されていますが、私の経験だとクリップオンストロボは連続で200~300回くらい発光させるとオーバーヒートして(一時的にですが)発光しなくなる場合があります。連続して大量に撮るような場合は大型ストロボのほうが安心かも知れません。

 【光軸というか光の形】

・大型ストロボ:○

・クリップオンストロボ:×

大型ストロボの場合、発光部分が円形をしており、照射される光も丸いです;

一方、クリップオンストロボは発光部分が長方形なので照射される光も「長方形」になります。

写真の例は照射角度を105mmにしています。照射角度を24mmに設定するともっと広がりますが、そもそもクリップオンストロボというのはカメラ本体のホットシューに付けて使うものなのでレンズとの干渉を避けるために下には光が照射されないような構造になっています。

それで大型ストロボもクリップオンストロボもベアバルブ(発光部分に何も付けない状態)で撮る場合もありますが、ソフトボックスやアンブレラを使って撮る場合もあるので実用上不便はない(用途次第)と思います。

【電源】

・大型ストロボ:×

・クリップオンストロボ:◎

大型ストロボはAC電源や外部バッテリーが必要ですが、クリップオンストロボは乾電池で使えます。大型ストロボの配線の取り回しはやはり面倒だし、コンセント探す手間も必要です。サクッとセッティングしてさっさと撮るという訳にいかない。また、設置場所に関しても狭いスペースで使えるクリップオンストロボは有利です。

実際のところライティング機材というのは決して小さくはありませんので、ライトスタンド立てる場所ですら困る場合があります。

【操作性】

・大型ストロボ:○

・クリップオンストロボ:△

操作性に関しては機種に依存するので一概に言えないですが、クリップオンストロボは筐体が小さい分ボタン類も小さく、けっこうチマチマ操作しないとならない機種が多いです。また、ダイヤル式なら光量調整が楽ですがボタン式だと何回も押す必要があるのでイラッと来るときがあります(好みの問題ですが)。

そういう点で大型ストロボというのは筐体が大きいのでボタンやダイヤルの操作性は高いと言えます。

【拡張性】

拡張性に関して言えば大型ストロボもクリップオンストロボも差はないです。昨今ではクリップオンストロボが大光量化してきたおかげで様々な機材が各社から販売されています。強いて言うなら大型ストロボのほうが選択肢は多く1,000W/Sクラス以上の大型ストロボだとソフトボックスやアンブレラもかなり大きなサイズのものが使えるという点においてクリップオンストロボよりも有利です。

【消費電力】

たぶん一番誤解されている部分だと思います。

「大型ストロボ=大きい=明るい」、そして「クリップオンストロボ=小さい=暗い」と思っている方がいらっしゃると思います。また、大型ストロボは100Vのコンセントが電源で、クリップオンストロボは単三乾電池(1.5V/本)4本だから違う、という「都市伝説」がありますが、これらは完全に間違いです。

そもそもストロボというのは「閃光」で光るのは一瞬です。しかもその「一瞬」というのは長くて「1/60秒」くらいです。なので必要な電力というのは「1/60秒発光させるだけ」で良いのです。要するに瞬間的に必要な電力は大きいが、それを常時点灯させているわけではない、ということです。

なので同じガイドナンバー58の大型ストロボもクリップオンストロボも消費電力は同じです。そしてポイントは乾電池でも発光させられるくらいの電力しか使っていないということです。

むしろ、大型ストロボに付いている「モデリングライト」という常時点灯しているランプの方が「常時点灯している分」消費電力が多いです。また、ストロボの電気代は(ワット数によりますが)一回発光させても「1円にも満たない金額」の場合がほとんどです。

【値段】

大型ストロボは高いのですが、かと言って大手メーカー製のクリップオンストロボが安いという訳でもない。むしろ製品によってはクリップオンストロボの方が高いものもある。

これはクリップオンストロボが進化し過ぎてしまって「ハイテク機械」になった、という背景があります。ただ、オフカメラ(ストロボとカメラを離して使う使い方)で使う場合においてそんなハイテク機能は不要です。報道写真や結婚式などいつどこで撮るか分からないような使い方の場合、そうしたハイテク機能が効果を発揮しますが、通常の撮影で必要かと言われればあってもなくても関係ないと思います。

ちなみに、クリップオンストロボには「TTL自動調光」という機能(メーカーによって呼び方違うようです)が搭載されており、この機能がクリップオンストロボが高額化している要因の一つだと思います。ただ、大型ストロボにこんな機能はありませんので「撮影における優先順位としては高くない」ということが分かると思います。

最初に書きましたが「光らせるだけ」なので撮りたい写真に必要な光量が得られる機材を選べば良いのです。

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いずれにせよそれぞれ一長一短あるわけで、正解はないのです。用途や自分のスタイル、どういう写真を撮りたいかで選べば良いということですね。

ご参考になれば幸いですm(_ _)m

 

 

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